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スタッフブログ「いってきます」by minetaka

「Side Kicks! beyond」の制作告知にたくさんのメッセージ、ありがとうございます。ゲーム開発はまだ始まったばかりなので、たくさん頂いている質問にもなかなかお答えできなくて申し訳ないのですが、移植版制作について少しだけ、お話しておこうと思って、この新しいブログにお邪魔します。

ゲームの移植版、というのは、プラットフォームを変えるだけのように見えて、実はとても複雑で、時間もお金もかかるプロジェクトです。多くの方々からのお声を頂き、またサクラダの街に行けることは、僕にとってこの上なく嬉しいことです。いつも僕達の作品に応援と愛情を傾けて下さってありがとうございます。
「Side Kicks!」は実は7年も前の作品です。僕にとって、とても思い入れの強い作品ですし、サクラダの彼らは大切な家族のようなものです。当時に比べてゲーム機の機能も上がっていますし、何も変えずにそのまま移植するという気持ちにはなれませんでした。
全てを作り変えるような『リメイク』や、当初の設定などを大きく変える『リブート』も考えましたが、核にある『サクラダという街で今も生きている彼ら』のことを思うと、当時描いた作品は、当時のままお届けするのが良いだろうと考え至りました。彼らの物語は変えませんし、変えられません。今回の「Side Kicks! beyond」では、彼らに会いに行く『方法』を少しだけ鮮やかにできればと思っています。
そういう気持ちで、今回は単純な『移植版』でもなく、大きく改変するような『リブート』でもなく、新たに「Side Kicks! beyond」と呼ぶことにしました。追加エピソードもありますし、UIなども新しくする予定ですので、7年前にプレイして下さった方も、ご期待頂ければ嬉しいです。

先日、「BUSTAFELLOWS」は累計販売本数10万本を突破しました。その「BUSTAFELLOWS」と「Side Kicks!」の大きな違いは、主人公とプレイヤーの関係性でもあると思います。「BUSTAFELLOWS」は『映画を遊ぶ』というスタイルに重点を置いています。ですから、演出上、主人公であるテウタ以外の視点に変わることもあれば、主人公が全く登場しない場面もありました。一方で「Side Kicks!」は、主人公イノリの視点に重点を置いています。プレイヤーが見る画面がイノリの視点であるように、プレイヤーが『そこにいる』視点を重視して制作しました。ですから、「Side Kicks! beyond」でもイノリに音声はつきませんし、イノリの設定も変わりません。
「Side Kicks!」や「BUSTAFELLOWS」に限らず、様々なテキストアドベンチャーゲームにおいて、主人公に音声があるかどうか、というのは、単にコストや手間の問題だけでなく、色んな理由で選ばれたスタイルで、ゲームクリエイターが、プレイヤーにどういう視点でゲームに参加してほしいか、というこだわりだと思っています。

これはまた別の視点での話ですが、役者にキャラクターを演じてもらうにあたって、声のない主人公に対する喋りと、声のある主人公に対する喋りは、実は大きな違いがあります。声のある主人公に話しかける声と、画面の向こうにいるプレイヤーに話しかける声は、全く違うものなんです。例えばの話ですが、もしも「Side Kicks!」を『映画を遊ぶ』というスタイルで作り直すとしたら、全ての音声を収録し直さなければ不自然な掛け合いになってしまうでしょう。そのぐらい、役者の演技には細かい視点が組み込まれています。

「Side Kicks!」が移植される時には主人公に声をつけて欲しい、という要望を沢山頂いていたので、この点についてのこだわりや演出意図はお話ししておきたいなと思い、書かせて頂きました。皆さんが遊んでいる色んなテキストアドベンチャーゲームでも、主人公に音声があるもの、ないもの、ぜひ遊び比べてみて下さい。

さて、今回の制作決定のお知らせで、皆さんに沢山のご期待を頂いているメッセージ、とても嬉しい限りです。一方で、これから本制作に入ることを考えるとプレッシャーも感じます。「Side Kicks!」を制作した当時のことを思うと、10年近くも前のことです。サクラダのシスイも言っていましたが、7年経つと人の細胞は全て生まれ変わるといいます。当時の僕はもうこの身体にいないのかも、と思うと、新たな気持ちでサクラダに赴くのが、楽しみでもあり、少し怖くもあります。

それでは、僕はひと足先にサクラダに行って、彼らの姿を探してきますね。
いってきます。

「Side Kicks!」&「BUSTAFELLOWS」シリーズ
シナリオ/ディレクター/プロデューサー
minetaka


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