やっほー!リコだよー!僕たちサイドキックスがジャパンに遊びに……お、お仕事しに行くよー!みんなで撮った写真とか、いっぱいアップするから、楽しみにしててねー!ジャパンのTwitter(@eXtend_SK)でもたくさんツイートするから、絶対見てねっ!

サイドキックス来日中!

※仕事で来日しています
      

"Glass reflection" feat.シシバ

 水槽の中の魚を見るのは初めてではなかったけど、こんな風に大勢で来たのは初めてだった。水族館は泳いでる魚達をただ黙って見ているものだと思ってたし、それで十分だと思ってた。今は、珍しい色の魚がいればリコが大はしゃぎするし、知らない形をした魚が泳いでくればチカが驚く。ヒバリはあまり大勢で行動するのは好きじゃないと思ってたけど、一歩後ろからみんなを見てる顔は楽しそうに見えた。
「お魚、綺麗だね」
 イノリが隣に立つと、フワリと優しい香りがする。イノリはガラスに手をついて、目をキョロキョロと動かしながら魚の動きを追っているみたいだった。いろんな種類の魚が混ざって泳ぐ大きな水槽。目で追うと、数匹ずつ、小さな群れのようにかたまっていたりする。大きな魚と、小さな魚。
「一緒に泳いでるのって、親子なのかな」
「そうかも。小さな魚が一生懸命追いかけてるの、可愛いね」
 イノリは小さく笑って指を指す。
「魚にも、親子があるんだね」
 イノリが指し示した先には、大きな魚を追いかけるように泳ぐ小さな魚たちがいた。
「ねえ、イノリは水族館とか動物園とか、よく行くの?」
「うーん、小さい頃は親と一緒に行ったりしたよ」
「そっか。僕はあんまり行ったことない。そういう、家族とかと行くようなところ。動物も、魚も、見るのは大好きだけど……あんまり、親と一緒にいなかったから」
 返事が返ってこなくて、横を見ると、イノリは困った顔をしていた。
「聞きたくない?」
「え? そうじゃなくて、その……聞いていいのかわからなかったから」
「なんで? 僕から話し始めたのに? イノリが聞きたくないんだったら話さない方がいいかなって思って返事待ってたんだけど」
「えっと……聞いてもよければ、教えてくれる?」
「僕は親のこと、よく知らないんだ。だからよく分からない。色々忙しい人達だったから……色々……」
 嘘をついているわけでも、誤魔化しているわけでもなかった。本当によく知らない。ただ、それだけ。何に忙しかったのかも知らない。
「そう、なんだ……」
 イノリの返事は気まずそうだった。確かに、こんなこと言われても、なんて答えていいのか分からないだろう。別に、辛いことでも悲しいことでもないけど、他人からしたらそう聞こえるだろうな。ふっと息を吐き出す。
「人間は食物連鎖の頂点にいるのに、動物の方が強い絆を持ってることもあるんだね」
 口にした瞬間、しまったと思った。また言い方を間違えた。イノリを困らせてしまったに違いない。
「そんな顔しないで、イノリ。あのさ、嫌な気持ちとかは少しもないよ。本当に。ただ、他の人とか、あの魚達が持ってるような絆が、よく分からないだけ。でもさ……」
 言葉を続けようとして、自分の口元が緩んだのに気づいた。水槽のガラスに反射する自分は、まるで他人のように見える。
「みんなと一緒にいると、こういうのが家族なのかなって勝手に思ってる。だから、僕にとっては、みんなが家族」
 イノリはどう返事をするのか迷っているようだったけど、ただ黙って、笑顔で大きく頷いてくれた。
「イノリ、見て。あそこ、あの一番すばしっこいのがリコかな。その近くにいる、近寄ると怒ってるの、チカみたい。サンゴの周りをゆっくり泳いでるのはヒバリ、かな。少し離れてじっと見てるのがノラ。岩陰で動かないの、たぶん寝てるよね。あれがタテワキ」
 僕がガラスを爪でコツンと叩いて言うと、イノリは水槽の中を見回して、同じようにコツンと小さく爪で音を立てた。
「あそこ、キョロキョロしてた小さい魚を連れてきた、青緑色の魚。あれがシシバだね。連れてきてもらったのが、たぶん私。道に迷ってたのかも」
 イノリが指差した方向には、2匹の魚がいた。僕がみんなに例えた魚たちがいる方へ泳いできたところだった。

 水槽の中にはたくさんの魚たちがいる。分厚いガラスの向こうで泳ぐ、その青緑色の魚はとても嬉しそうに見えた。

 そのガラスに映る自分も笑っていた。

-photo by Inori, 2017.07.08

(text by minetaka)