音楽都市シャル。
音楽によって栄えたこの町では
音に纏わる不思議な事件が頻繁に起きる。
といっても、ひよこが歌を歌ったり、
オルゴールが喋りだしたり、
そんな何処か微笑ましいものだった。
ところが最近、シャルの街で深刻な事件が起き始めていた。
「音の喪失事件」
突然、音楽が奏でられなくなったり、
歌を歌えなくなったり、
ついには、音自体が聞こえなくなる者まで……。
それはまるで、
人々から音楽そのものを奪おうとする悪意が
存在しているかのようだった。
そんな中、とあるコンサート会場で、
大規模な音の喪失事件が発生する。
演奏者、観客を問わず、
会場にいた全員の”音”が失われてしまった。
…ただ一人を除いて。
たった一人、なぜか音の喪失の影響を受けなかったのは、
シャルの街で暮らすごく普通の少女リート。
なぜ自分だけが無事なのかと困惑する少女。
その少女の前に現れたのは、
街で話題の楽団「シャル王立楽団」で活躍する
5人の青年達だった。
事件をきっかけに少女はごく普通の日常から一歩を踏み出す。
その一歩が運命の出会いと、
音楽喪失の謎につながる前奏曲であるとも知らずに。
時計の針が時を刻む音。
雨が地面に落ちる音。
小鳥たちのさえずり。
日常にありふれた音達は、時として音楽に聞こえてくる。
世界は、音楽に溢れていた。
音楽は人の傍らに常にあり続け、様々な感動を与えてくれる。
人々も音楽を心から愛し、慈しんだ。
そんな人々の想いが、音楽に不思議な力を与えた。
それは「心」
音楽の力によって心を持った鳥たちは人の言葉を喋り、歌いだし、
ピアノもとてもお喋りになった。
今作の舞台は、
音楽と人が楽しく賑やかに暮らす世界。
そこで起きる「音の喪失事件」
音楽の在り方すら変えかねない
重大な事件に巻き込まれたごく普通の少女と、
偉大な音楽家の遺志を継いだ5人の青年の物語が、
今、幕を開ける。
かつて、音楽は
王族や貴族など、限られた人のみが
楽しむことを許された芸術だった。
とある音楽家がそのあり方に異を唱え、
音楽を大衆に向けた自由な芸術として解き放つ嚆矢となった。
それに同調した多くの音楽家達の活動により、
音楽は誰もが楽しめる自由な芸術となった。
楽しい時間をより楽しく、
悲しい時間の慰めに、
音楽は人々に寄り添い、様々な感情を与えてくれる。
そんな音楽達を人々は深く愛した。
そして、人々の深い愛情を受けた音楽は
不思議な力を持ったのだった。
このきっかけを作った音楽家が拠点としていた街こそ、
現在のシャルである。
シャルは音楽によって栄え、発展し、
音楽に満ち溢れた街となった。
【音楽特殊機関「ファタリテート」】
音楽に関わる事件を解決する為の専門機関。
音楽が不思議な力を持ち始めた時期に、
それによって引き起こされる不思議な事件の解決や、
音楽の力が宿った特別な人物、動物、無機物の管理を目的に結成された。
シャルの街で発生する音楽に関する事件は、
全てファタリテートの管轄下におかれ、警察さえも関与することはできない。
そして、特殊な音楽事件に対処する為に、
ファタリテートは「継者(ファルガー)」と呼ばれる特殊な力をもった青年達を
組織に集結させた。
彼らは、普段は王立楽団の一員としてステージに立っている。
【継者-ファルガー-】
先天的、もしくは後天的に音楽にまつわる特殊な力を持ったものを「ファルガー」と呼ぶ。
ファルガーの中には、過去の偉大な音楽家の力を継いだものもおり、
楽器を武器に変化させる等、特殊な能力を持っている。
ファタリテートの中でも特に優れた力を持つ5人の青年達は
“五線譜”と呼ばれ、事件解決の最前線で活躍している。
【楽団と警察】
シャルの街の平和と秩序を守る警察署。
しかし、音楽に関する事件は、
王立楽団が取り仕切ることとなっており、
警察ですら介入することを許されていない。
そんな軋轢から、
楽団と警察が衝突することも少なくない。
シャル市警としては、王立楽団が「音楽」に関する重要な事件を隠蔽しているのではないか、
という疑いを持っており、近年ではその態度をより硬化させている。
王立楽団への捜査を本格的に開始する為に、新しい警視総監が着任するという噂が流れている。